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2008.10.12(Sun)
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東京都庭園美術館の「アールデコの館-庭園美術館建物公開」を観に行った 前編

アンリ・ラパンのデザイン白磁の香水塔ルネ・ラリック作の有翼の女神のガラス・レリーフ
山手線目黒駅から徒歩で5分程にある東京都庭園美術館で10月1日から10月13日まで開催されている「開館25周年記念 アール・デコの館−庭園美術館建物公開−」へ行ってきました。

東京都庭園美術館は普段の展覧会では内部の写真を撮ることはできませんが、「開館25周年記念 アール・デコの館−庭園美術館建物公開−」では写真を撮ることができます。商業写真や三脚、フラッシュを使用した撮影はNGとなっていますが、滅多に無い機会なのでこれを逃す手は無いです。

ちなみに東京都庭園美術館のスタッフの方に伺った話では、「開館25周年記念 アール・デコの館−庭園美術館建物公開−」以外でも内部の公開をしているらしいです。
ちなみに「東京都庭園美術館」を同館のHPから引用すると以下の通りです。

東京都庭園美術館は 朝香宮[あさかのみや]邸(朝香宮殿下は久邇宮[くにのみや]家第8王子、妃殿下は明治天皇第8皇女)として1933年(昭和8年) に建てられた建物を、そのまま美術館として公開したものです。戦後の一時期、外務大臣・首相公邸、国の迎賓館などとして使われてきましたが、建設から半世紀後の1983年(昭和58年)10月 1日、美術館として新しく生まれかわりました。


東京都庭園美術館の「アールデコの館」の券売場の行列東京都庭園美術館の「アールデコの館」の入場券
13時くらいに東京都庭園美術館に到着。既に長蛇の列ができていました。遅きに失した感がありますが列に並び、15分程待って入場券を購入。
ちなみに入場券は大人800円、大学生640円、小中高校生は420円でした。

東京都庭園美術館
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の正面外観です。ややベージュ掛かった白色の壁と直線的な輪郭、そして円柱型の出窓が良いアクセントになっています。窓は縦長の長方形に黒色の窓枠で色の対比も美しい。

東京都庭園美術館の玄関前の獅子舞東京都庭園美術館の玄関前の獅子舞
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の玄関左右にある獅子舞のブロンズ像。左右対称かと思いきや、左側の獅子舞は右前足の下に毬があり、右側の獅子舞は左足で小さな獅子舞を愛でているようです。

正面玄関のモザイク床
いよいよ東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の内部に入ります。ここからが本来写真撮影がNGなエリアです。
正面玄関を入って直ぐの床はタイルでモザイク模様が描かれています。

ルネ・ラリック作の有翼の女神のガラス・レリーフルネ・ラリック作の有翼の女神のガラス・レリーフ
モザイク床に足を踏み入れると、ルネ・ラリック制作の有翼の女神のガラス・レリーフが出迎えてくれます。作品名は「PALAIS ASAKA」。1932年の作品です。

裏側から観た有翼の女神のガラス・レリーフ
大広間から見た「PALAIS ASAKA」。外光が透過し、背後からみた女神像も美しいです。

1階のコインロッカーから見える階段の装飾
1階入口に入って直ぐのところ、2階への階段の脇にはコインロッカールームがありますが、2階の階段に施されたガラスとブロンズ装飾も見事です。

1階のコインロッカーの前にある洗面台1階のコインロッカーの前にある洗面台の蛇口
ロッカルームの脇には大理石で作られた洗面台がありました。蛇口の陶器製のつまみには「PORCHER PARIS」とあり、フランス製です。

東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の大広間
1階の大広間です。天井に規則正しく配置された照明が美しい。奥のガラス扉が先ほどのルネ・ラリック作の「PALAIS ASAKA」です。
大広間について解説されたパネルから転載をすると以下の通りです。

大広間

大広間は壁面にウォールナット材を使用し、装飾を抑えた重厚な空間を作り出しています。天井には格子縁の中に40の半円球の照明が整然と配置され、正面のアーチに挟まれた鏡と大理石の暖炉はシンメトリーの落ち着いたデザインに華やかさを添えています。中央階段右手の大理石レリーフはブランシェ(Blanchot)の作品で、古典的作風がこの空間に和らぎを与えています。
(内装 アンリ・ラパン)


大広間には「朝香邸のアール・デコ」と題した朝香邸に関して解説されたパネルがありました。朝香邸の設計思想や概要が簡潔に分かりやすく書かれていましたので転載しておきます。

朝香宮邸のアール・デコ

昭和48年(1933年)に竣工した朝香宮邸は宮内省内匠寮工務課が設計、監理し、戸田建設が施工を担当しました。アール・デコの精華ともいえる建築の完成は、朝香宮自身が依頼したアンリ・ラパンらフランス人芸術家、デザイナーの協力と、そしてなによりもアール・デコを目のあたりにし、その様式美に魅せられた自邸の建設に積極的に取り組まれた朝香宮ご夫妻の熱意があって実現したことといって過言ではありません。
外観はモダニズム建築のもつ抑制が感じられ、立面は直線の織り成す幾何学的リズムと簡潔さを基調として、列柱やベランダ廻りのレリーフなどが示すアール・デコ的な装飾が単調になりがちなファサードにアクセントをあたえています。1階は中庭を中心としたロの字型のシンプルな平面で、東と南に面した部分は客室を中心にしたパブリック・スペースで構成され、事務所、厨房等のある部分とは明確に区別されています。2階は朝香宮家のプライベート・スペースで、すべて洋間です。こうした設計プランは内匠寮が手掛けた建築に共通しており、典型的な平面プランといえます。現代社会のはしりともいえる時代を反映し、量産可能な工業製品のデザインからはじまったアール・デコは庶民的な様式でしたが、朝香宮邸においては日仏のデザイナー、技師が総力をあげて、建築材料を厳選し当時のできうる技術を駆使し、宮家にふさわしい格調高い独特のアール・デコ建築を創造しました。

朝香宮邸
敷地面積 35,000平方メートル(約10,000坪)
建設面積 1,048.29平方メートル(約318坪)
延床面積 2,100.47平方メートル(約637坪)
構造 鉄筋コンクリート造2階建(地下1階)

朝香宮邸建築に携わった宮内省内匠寮工務課は宮内省所管の建築、庭園、土木などを司るエリート集団で、100名ほどの優秀な人材を抱えていました。
宮内省内匠寮が手掛けた主な建築物は赤坂離宮(明治41年)、竹田宮邸(明治44年 現高輪プリンスホテル)、久邇宮邸(年代不詳 現聖心女子大学)、李王家邸(昭和5年 現赤坂プリンスホテル)、東京国立博物館(昭和12年)などがあります。
朝香宮邸の設計にあたり最も重要な役割を果たしたのは宮内省内匠寮の技師であった建築家権藤要吉(1895-1970)です。彼は1925年から26年にかけて貴族の住宅及び博物館研究のために欧米に派遣されますが、その際にパリのアール・デコ博を数度訪れ、会場に展開された近代建築、デザインの数々を熱心に研究しました。朝香宮の信任も厚くアール・デコに現地で接した権藤要吉は設計担当として最適任者であったといえましょう。


彫刻家レオン・ブランショ作の大理石レリーフ「戯れる子供たち」
大広間の壁面に嵌めこまれて飾られている大理石レリーフ「戯れる子供たち」です。彫刻家レオン・ブランショ作。

アンリ・ラパンのデザイン白磁の香水塔
そして大広間の隣の次間(つぎのま)には東京都庭園美術館の象徴とも言える「香水塔」です。オレンジ色の壁、香水塔の白、それを支える土台部分の黒、モザイク床、破綻しそうな組み合わせが見事に調和しています。
香水塔のデザイン、次間の内装は共にアンリ.ラパンが担当しました。アンリ・ラパンの名は東京と庭園美術館に頻繁に登場します。主幹デザイナーと言って過言は無いでしょう。香水塔について、こちらもパネルから転載します。

次間(つぎのま)・香水塔

庭に面した次間は大広間から大客室への繋ぎの役割を持っています。白色のセーブル製香水塔、モザイク床、黒漆の柱、オレンジ色の人造石の壁、そしてガラス窓より広がる庭園の緑・・・これらが織りなす色彩のハーモニーは、大広間の落ち着いた色調とは対照的にアール・デコ特有の華やかな空間を形成しています。白漆喰の天井は半円状のドームとなっており、装飾過多になりがちな空間に調和をもたらしています。この小さな空間においても材質、色彩にアール・デコの特長が顕著にあらわれています。
香水塔(Perfume Tower)はアンリ・ラパン(Henri Rapin)が1932年にデザインし、国立セーヴル製陶所で製作され、フランス海軍より朝香宮家に寄贈されたものです。朝香宮邸当時は上部の照明内部に香水を施し、照明の熱で香りを漂わせたという由来から、後に香水塔と呼ばれるようになりました。フランス、セーヴル製陶所では“Vase Lumineux Rapin”(ラパンの輝く器)と記録されています。
(内装 アンリ・ラパン)


正面玄関左手にある「旧第一応接室」正面玄関左手にある「旧第一応接室」
香水塔がある次間の奥、正面玄関の左側にあるのが「旧第一応接室」です。

旧第一応接室

正面玄関左手の旧第一応接室は、朝香宮邸当時は宮様など賓客のご訪問の際、お供の御用係が待機をした部屋です。また外国人ゲストがコートを脱ぐ場所などにも使用していました。玄関右手にある、現在の美術館入り口及びミュージアム・ショップには、宮家当時は受付外套室、第二応接室があり、一般の新年の記帳なども行なわれていました。
旧第一応接室は、玄関に面して両開き扉、館内次間側に片開き扉が配されています。柱、巾木等は楓ベニヤ材、床は寄木張りです。展示の長椅子と小椅子は当時使用されていたものです。(布は張り替え)当時貼られていた壁紙は、二階妃殿下居間ほかプライベート・ルームに使用されていた壁紙と同じく、スイス、サルプラ社製 製品名「テッコー」ですが、その後撤去されたため、旧第一応接室公開にあたり(1988年)現在の同社の同製品(グリーン系同系色・同デザイン)を施工しました。


東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の小客室小客室の壁にはアンリ・ラパンのサインがある
香水塔がある次間の隣で、第一応接室の右隣にあるのが「小客室」です。壁面には壁紙ではなく樹木と川を題材とした淡い緑色の油絵が描かれています。
壁面にはアンリ・ラパン(Henri Rapin)のサインが確認できました。

小客室

少人数の来客の際に使用された応接室です。壁面一杯に描かれた壁画は、宮邸の主要室内の内装を担当したフランス人装飾美術家、アンリ・ラパンが手がけました。
淡い緑色を基調とした樹々と水辺のある風景に、シルバーの絵の具でハイライトが付けられています。ラパンは宮邸装飾の仕事に際して、古代ギリシア・ローマの古典建築のエッセンスとともに、豊かな水と緑の物語をモチーフに選びました。この部屋から生まれた川の流れは、あたかも自室の香水(噴水)塔を経て大客室の壁画へ続き、大食堂で白鳥が憩うヴィラの苑池へと注いでいるかのようです。様式化された青海波文(せいかいはもん)のような幾何学的な装飾が施されたラジエーター・カバーは、宮内省内匠寮によってデザインされたものです。


大客室のエッチンガラスのドア
香水塔がある次間と隣り合っているのが大客室ですが、観賞客が多すぎたので写真は掲載しません。
上の写真は大客室のエッチンググラスが嵌めこまれた扉です。

大客室のラジエーターカバー大客室のシャンデリア
大客室のラジエーターカバーとシャンデリです。ラジエーターカバーは宮内省内匠寮が手がけ、シャンデリアは花と歯車をモチーフに、ルネ・エリックが制作しました。
ちなみに、東京都庭園美術館で注目するものの一つに各部屋や通路の照明があります。部屋の内装やデザインはもちろんそれぞれ独特で且つ均整が取れた美しさがありますが、その部屋部屋に合うように個性的な照明が取り付けられています。

大客室

南側の庭に面したテラスを控え、朝か宮邸のなかでも最もアール・デコの粋が集められているのが、この大客室と次に続く大食堂です。ルネ・エリック制作のシャンデリアをはじめ、銀引きのフロスト仕上げのエッチング・グラスを嵌めこんだ扉や大理石の暖炉の装飾等、この部屋では幾何学的にデザインされた花が主なモチーフとして用いられています。イオニア式柱頭をもつ柱はシコモール材にラッカー仕上げで金茶のつやを出し、天井には漆喰仕上げのジグザク模様が施されています。壁面の上部を囲むようにキャンバス地に描かれた壁面はアンリ・ラパンによるものです。
(内装 アンリ・ラパン)


東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の大食堂
大客室に続くのが広々とした空間が広がる。大食堂です。

大食堂

大食堂は隣の大客室とはエッチング・ガラスの引き戸で仕切ることができます。南面に庭園を望み大きく円形を描く張出し窓は開放的な独特の空間を形作っています。来客時の会食用に使用された部屋ということで、ルネ・ラリックのシャンデリアやガラス扉等に、くだものがモチーフとして使われ、ラジエーター・カバーには魚がデザインされています。暖炉の上の壁画はアンリ・ラパンの作で、赤いパーゴラと泉が油絵で描かれています。壁面はブランシェによるもので、プラスターの植物文様のレリーフに銀灰色の塗装が施され、オレンジ色の大理石の柱と呼応し、品格を保ちながら大胆な強い印象を感じさせます。
(内装 アンリ・ラパン)


大食堂のラジエーターカバー大食堂壁面の銀色の植物模様のレリーフ
大食堂の円形張出し窓の下に壁に沿って配置されている魚をモチーフにしたラジエーターカバーと壁面の植物文様のレリーフ。

東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の旧食堂
庭園美術館1階の一番奥には宮家のご家族が使用した小食堂があります。

旧食堂

一階奥に位置し、南面パーゴラのあるテラスへの扉と西面出窓のあるこの部屋は、当時、宮家のご家族のための食堂でした。床に寄木張り、天井にはシャンデリア、そしてダイニング・テーブル・セットを配す一報で、秋田杉を使用した平組格天井仕上げ、床板に欅を使用した床の間など木材を多用した和風の造りを採り入れ、家族団欒のなごみの場を形づくっていました。大広間や大食堂など来客用のパブリック・スペースが続く一階にあって、小食堂前の廊下のアーチからは宮家の内側の空間になっています。当時、宮家のご家族は二階の居間や寝室のプライベード・スペースから第二階段(裏階段)を通り食卓に着かれたということです。
小食堂のとなりは配膳室として使用され、厨房は小食堂前の廊下の右奥にありました。(現在は美術館施設として使用)

*旧食堂の現在の壁紙は当時のオリジナルではありません。


次は朝香宮邸の2階を紹介します。続きはこちらのエントリーへどうぞ。
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